輸送インフラの現状と物流における課題 - 中国のケース
中国は、過去15年間の急激な経済成長の陰で、輸送インフラの能力不足に苦しんできましたが(下図6参照)、近年、全ての輸送モードに相当の投資が行われてきました。現在、中国政府はインフラの大幅な改善、規制の改訂、海外投資への友好政策などを掲げた5ヵ年計画のかなりの部分を実行しています。
<図6:中国の主な経済地域と港湾> 出典:World Fact Book

中国は、外資系企業を含む中国法律企業に対して、輸出入産業を開放しました。CEPA(緊密経済提携協約)によって、香港に拠点を置く企業の中国市場へのアクセスが特別に認められました。これは、グローバルに活躍する3PL企業にとっては、長年香港で登記してきて、ようやく中国で業務を開始することができるという特別な意味を持ちます。
道路輸送

中国が抱える主な課題のひとつに、巨大貨物を輸送できる高速道路が不足しているという問題があります。過去5年間の大規模な投資によって、中国の道路ネットワークは改善されてきました。2000年に16,300kmしかなかった高速道路は、2005年末には41,000kmに伸び、世界第2位となりました。過去5年間では、2,740億ドル、350,000kmの新設道路の建設が行われましたが、これはその前期5年間に行われた投資の倍に相当します。また、上海-成都、北京-珠海をつなぐ高速道路を含めた200,000kmの道路建設が新たに予定されています。
中国の内陸輸送に欠かせないトラック運送産業は、非常に細分化されており、750,000社を超えるトラック会社が1社平均1.3台を所有しています。彼らは、古い公共道路貨物ハブを利用しており、全体的に相当非効率な業務となっています。また、貨物の破損率は2%を超え、オンタイム納品目標は90%以下に留まっています(ヨーロッパや米国のほとんどの業種標準は98%超)。
中国の高速道路は、ほとんどが有料道路で、その通行料が中国の内陸輸送コストの大部分を占めています。例えば、40フィートのコンテナを北京から上海まで運ぶのに、およそ400ドルの通行料がかかります。安価な労働力にも関わらず、輸送コスト全体としては、過去5年間で大幅に下がることはありませんでした(下図7参照)。
<図7:中国のGDPに対する物流コスト割合(%)>
出典:China Logistics Information Center
| 中国のGDPと比較した物流コスト % |
| 年 |
輸送コスト |
保管コスト |
管理コスト |
物流全体コスト |
| 2000 |
10.1 |
6 |
3.2 |
19.4 |
| 2001 |
9.9 |
5.9 |
3.1 |
18.8 |
| 2002 |
10 |
6.1 |
2.9 |
18.9 |
| 2003 |
10.4 |
5.9 |
2.6 |
18.9 |
| 2004 |
10.6 |
5.6 |
2.6 |
18.8 |
| 2005 |
10.2 |
5.8 |
2.5 |
18.6 |
鉄道

中国の鉄道輸送能力は、過去5年間でわずか9%しか伸びていません。これは、システムの慢性的な制約条件が原因です。75,000kmに及ぶ路線のうち、20,132kmは2005年末までに電鉄化されます。これによって、中国は世界で3番目に巨大な電鉄ネットワークを持つことになりますが、それを管理するシステムが需要に対応できないという問題が残っています。2000年~2005年における1日の鉄道輸送は、77,600から100,000へと増加しましたが、現在の鉄道ネットワークでは、中国産業の現行需要のわずか50%しか満たせないことがわかっています。需要が毎年約20%ずつ増加する一方で、輸送能力は9%しか向上しておらず、市場の不均衡が起こるのは明白です。鉄道への投資は、道路投資のわずか15%に過ぎず、また中国の西部地域に限定されてきました。
空輸

中国の国際空輸市場もまた、輸送能力の制約によって歪められています。国際便のある地方空港を利用したほうが便利であっても、輸送能力の制約があるために、これまで2大国際ゲートである上海や香港が利用されてきました。空輸のリードタイムは、ヨーロッパや米国と比較すると、文書処理スピード(特に特急便の場合)が遅いために、国際標準よりも長くなっています。
現在、グローバルに活躍する主な物流企業は、全て中国に進出しています。FedEx社やUPS TNT社、DHL社といった大手インテグレーターが特に有名です。DHL社の活躍が最も顕著ですが、UPS社やFedEx社もサービス規模と内容の拡大に積極的に取り組んでします。UPS社は、同社の旧ジョイント・ベンチャー・パートナーであったSinotrans社の特急便部門を買収しました。これに続いて、FedEx社はDTW社のジョイント・ベンチャー部門を買収し、89の新拠点を手にいれました。こうした買収は、中国がWTO加入要件として物流産業を外資系企業に開放した2005年12月に始まりました。これまで、グローバル企業の国内市場へのアクセスは、現地オペレータ企業との提携に限定されていましたが、今では各社が自由に業務を展開することが可能です。
近年、中国政府と民間企業は、主要空港を通る貨物や乗客の流れを改善すべく、中国の航空接続の改善に注力してきました。政府はこれまでに60億ドル近くを民間航空に投資してきました。また、今後10年間に上海浦東や北京空港の処理能力を倍増させる計画があります(下図8参照)。これによって、中国の直行便が、2000年の114路線から2005年には1279路線に増発されます。また、この5年間で国際区間が111から224へ増加し、貨物輸送能力が改善したことで、需要への対応能力の向上といった相乗効果を生んでいます。
<図8:中国の主要空港における処理能力予測>
| 空港 |
2005年 |
2015年 |
2020年 |
| 浦東上海 |
2,200,000 |
4,000,000 |
6,000,000 |
| 北京 |
770,000 |
1,850,000 |
N/A |
| 香港 |
3,060,000 |
N/A |
N/A |
| シンガポール、チャンギー |
1,500,000 |
N/A |
N/A |
| ロンドン ヒースロー |
1,320,000 |
N/A |
N/A |
出典:IFW 24/4 およびジェーンズ空港考察 2006年2月
港湾・水上交通

中国は、港湾の処理能力を改善する大規模な計画に取り組んでいます。過去5年間に、コンテナやバルク商品を扱う920超の特化型ドックを既存港湾に設置し、また新しい港湾の建設も引き続き進行しています。また中国の港湾間は、61,000km超の国内水路で接続されています。
さらに中国は、輸送の動脈である長江川を改修する大規模な5ヵ年プログラムを発表しました。これは、重慶市などの都市への海外投資を受けて、長江川を往来するコンテナ輸送が年間42%の成長率で増加したことが背景となっています。新しい港湾の建設が代表的な例ですが、パール川西の三角州に南沙を建設するプロジェクトでは、第一フェーズで300万TEU、第2フェーズで420万TEUの処理能力が追加されます。
しかし、こうした現在のインフラへの投資は、輸送コストの低下と市場競争を招く可能性があります。その例として、前述の南沙の新港建設が挙げられます。2006年2月のContainerization
International(国際コンテナ輸送)の報告によれば、現地荷主は、塩田ではなく南沙を利用することでTEU当たり100ドルのトラック費用を削減することができると言われています。また、南沙の利用を促進するために、地方道路の通行料が値下げされ、ターミナル取り扱い手数料(THC)は香港の50%になっています。
また、上海のコンテナ貨物施設は今、大規模な拡張プロジェクトの真っ最中です。中国の輸送産業を取り締まる中国交通部の予測によると、上海や近隣の浙江省や江蘇省では、2010年までに年間4,000万TEUを処理することが見込まれています。
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