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輸送インフラの現状と物流における課題 - インドのケース

道路輸送

インドでは、旅客の約95%、貨物の65%が道路輸送を利用しています。世界銀行によると、インドの高速道路ネットワークは、1平方キロメートル当たり0.66kmと米国の0.65kmにほぼ相当し、中国(0.16km)、ブラジル(0.20km)に比べて非常に密集しています。しかし、約380万kmの道路のうち、140万kmは舗装されておらず、国道はわずか52,000kmしかありません。米国は、全410万kmの道路のうち、74,000kmが高速道路で、EU(欧州連合)では全460万kmの56,704kmが高速道路です。また、インドの道路ネットワーク全体の2%に満たない国道を使った輸送は、全交通量の40%近くを占め、4車線道路は、国道・州道のわずか2%しかありません。

先進国の1日当たりのトラック走行距離が600kmであるのに対し、インドではほとんどのトラックが1日に400kmしか走行しておらず、また全運送の約12%が空車状況で、インドの輸送ネットワークを利用するユーザーにとって課題となっています。また、運転手の大部分(88%)は自動車教習所に通った経験がなく、夜間休憩所や他の公共施設も適度に配置されていないために、有効な車両経路の決定を妨げています。さらに、州境界を規制、コントロールする適正な規制基準が欠如しているために、州を横断する貨物が遅延するという問題も抱えています。こうした道路ネットワークや供給元の欠陥による輸送の遅延や、交通事故の多発による経済的な損失は計り知れません。また、陸や港での遅延が結果的には生産分野における在庫コストの上昇を招き、西欧諸国に対する競争力に影響を与えます。

インドの道路輸送の大部分は、民間企業によって運営されています。彼らは、鉄道分野の能力不足や州の許可制度の自由化をきっかけに生まれた新たな機会の発掘に積極的に取り組んでいます。また、金利の低下やディーゼル燃料の助成金支給制度などの燃料価格方針を背景に、道路輸送分野への投資が進み、成長を後押ししています。

また、インドでは、主要高速道路をつなぐ道路建設や既存道路幅の拡大など、大掛かりな道路改革が進んでいます。NHDPと呼ばれる国家高速道路開発プロジェクトでは、主要な全ての商業センター(下図2参照)をつなぐおよそ13,146kmの高速道路を、密集した交通ルートに建設する予定です。これには、デリ、コルカタ、チェンナイ、ムンバイを接続する5,846kmの黄金の四角地帯(Golden Quadrilateral)や南北ルート、東西ルートが含まれます。

<図2:建設中の国道> 出典:NHDPインド政府

鉄道

インド鉄道はアジア最大の鉄道システムであり、世界で4番目に最も利用されています。EUの鉄道が全長222,000kmであるのに対し、インド鉄道は全長62,458kmです。インド鉄道の収益の70%は貨物部門が貢献しており、こうした採算部門の利益を赤字部門である旅客部門へ投じています。しかし、割高な運賃体系が足枷となり、鉄道から道路輸送への貨物輸送のシフトが進んでいます(下図3参照)。鉄道輸送のシェア減退は、経済成長に伴う交通量の増加にシステムが対応できなかったことが主な理由です。こうした能力上の制約によって、鉄道システムは、電力や鉄鋼、セメントなどのバルク材の運搬を中核的な産業分野として注力する道を選択しました。

<図3 道路と鉄道貨物のシェア率> 出典:XLRI、Jamushedpur、India

空輸

近年、インドの空輸産業は規制の自由化によって大きな成長を遂げました。2002年~2007年の5年間に輸出入政策を適用し、2007年までに世界貿易の1%のシェアを獲得するという目標を掲げています。現在、インドには60の空港があり、そのうち11が国際空港です。近年の航空交通は、旅客・貨物ともに急激に増加し、インドの4つの主要な空港であるボンベイ(ムンバイ)、ニューデリー、カルカッタ、マドラス(チェンナイ)に負荷が集中しています。そこで、これまで手付かずになっていた航空産業の再生をかけて、400の空港の追加・改修を含めた航空市場の拡張計画の最終構想に取り掛かっています。またインド航空は、2005年に世界で最も多くの航空機を購入し、現在の保有台数5機から近年中には150機余りに増えることが見込まれています。

大手インテグレーターやグローバルに活躍する3PL企業は皆、インドに進出し、積極的にビジネスを展開しています。DHL社は、アジア太平洋地域における主要な4つの成長市場のひとつとして、インド国内の小荷物運送業に1億2,800万ドルの投資を確約しました。一方で、航空機サプライヤは、国際ハブ施設との往復貨物配送に向けて、効率的なトラック管理システムを構築することが求められています。FedEx社などの企業は、インド国内の施設数を倍増し、4,348の市や町をつないでサービスの向上を実現しています。また、グローバルに活躍する大規模貨物フォワーダーの多くは、中国やインドでの業務の拡張計画を発表しています。

海運

インドの長い海岸線には、インド港湾信用組合を通してインド政府が管理する主要な11の港があり、また139の小さな港が州政府によって管理されています。主な港には、カルカッタ/ハルディア、ムンバイ、ジャワハーラル、ネール港やナーバシェバ、マドラス、コーチン、ビシャーカパトナム、カンドラ、モルムガオ、パラディプ、ニューマンガロール、トゥティコリンなどが含まれます。インドの港を通るスループット全体の90%は、こうした主要港で処理されています。港湾航行総量の約80%がドライ/液体バルク商品の輸送で、残りはコンテナ貨物を含む一般貨物です。

インド港外を運行する大手グローバル運送会社は、Maersk社やAPL社を含めて何社かあります。しかし、西欧港湾への直行便を提供できる運送会社は限られており、多くの場合は東南アジアや中近東での積み替えが必要です。

インドの海運産業はいくつもの課題を抱えています。インドの波止場は常時フル回転で、メンテナンスする暇もありません。船舶は、停泊待ちすることが多く、荷物の揚げ降ろし作業も非効率です。船舶の平均ターンアラウンド時間は、液体、ドライバルク、一般貨物でそれぞれ3.4日、9日、3.6日と試算されています。

こうした課題を抱えながらも、過去10年間のコンテナ輸送は毎年平均13.4%の割合で増加し(下図4参照)、2004年には439万TEU、2012年までに840万~1080万TEUに到達することが予想されています。インドの西海岸にある港は、2004年に約68%の運行を処理しました。また中国との取引増加の恩恵を得て、インドの西回り取引は過去2年間で毎年30%近く増加してきました。これに対し、同期間の東回り(輸出)の平均成長率はわずか6~8%にとどまっています。

<図4:港湾交通の成長と港の処理能力の増加> 出典:Asian Age、2005年10月2日

投資活動

インドの物流産業を再生すべく投資活動が活発に行われています(下図5参照)。マクロレベルでは、ここ数年内に民間企業から5億米ドルの投資があるとインド政府は見込んでいます。また政府は、2010年までに輸送インフラに170億ドルを投資する計画があります。国道の改修工事については、世界銀行やアジア開発銀行、日本の海外経済協力基金など、外部の国際機関からの援助を得ています。

<図5:インドの物流インフラへの投資>

分野 新規
投資の
割当
対インド
外国
直接投資
限度改訂
プロジェクト
終了予定
現状
空港 550億
ドル
49%
保有
2005-2006年末 トップ3航空会社を民営化、いくつかの中規模空港を建設中
航空システム 50億
ドル
49%
保有
2004-2006年 国営企業と民間企業の競争、FDI Capが49%に上昇
港湾 275億
ドル
完全
民営化
2008年末 トップ4港が民営化、250億ドルかけた Sagarmala(連結海)では、トップ6港の開発および海岸線に200マイル間隔で中規模港を設置することに注力
道路 220億
ドル
国営 2004-2006年 Golden Quadrilateral、随意契約など
鉄道 150億
ドル
国営 2008年 世界最大の雇用主、巨大ネットワーク、地下鉄ネットワークでROI改善

 

  インド、中国の物流における舵取り~機会と課題~
  P1 序文
  輸送インフラの現状と物流における課題
  P2 インドのケース
続きを読む>>  P3 中国のケース
  インドや中国から調達する企業の業務リスクとリスク緩和のための戦略
  P4 リスクを緩和するために西欧諸国は何をすべきか?