オークションはいつから敬遠されるようになったのか?
Patrick Furey著
会社が財務難に陥るひとつの原因として、サプライヤとバイヤーの取引関係悪化を招いた購買部門の責任と追及された結果、購買部がオークション(入札)から遠のいてしまった企業が多くあります。アリバ社のPatrick Fureyは、こうした社内批判に惑わされ、大きなコスト削減の機会を逃してしまわないように調達担当者の方にアドバイスします。
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どうすればコスト削減の効果を高めることができるのか? 私は最近、アリバ主催の”スペンド マネジメント デー”というイベントにおいて、「調達すべき最優先商材カテゴリ」という題材について講演し、その講演直後、参加されたアリバの顧客と私の講演内容について話し合いました。すると、一人の直接材バイヤーの方が、金属・プラスチック市場の動向に関して質問した際、金属プレス市場やプラスチック射出成形市場でコスト削減効果を高めるにはどうすればよいのかと、私の助言を求めてきました。私は、彼が今取り組んでいるその商材カテゴリの購買戦略や調達目標について質問した後に、オンラインオークションで競争調達プロジェクトを実施することで短期にコスト削減を達成し、それを企業利益に還元させるのが最善の方法ではないかと提案しました。しかし、意外にも「うちの会社は、リバース・オークションを信じていないのです。ですので、他の方法はないでしょうか?」という質問が返ってきました。
私はその質問に対して、原材料や工具の価格交渉などオークション以外の方法について説明し、非競争的な環境、つまりオンラインオークションではなく従来の入札依頼でオンラインRFP(提案依頼)を実施するという方法を提案し、彼に納得してもらいました。彼は、現在の価格を何割か引き下げることができることを知り、満足した様子で退室されました。私は後になって振り返って考えてみると、オークションを使わないという彼の会社の方針をさらに後押ししてしまったような気がしました。彼の説明によると、会社はオークションに必要な条件はすべて揃っている状況でした。つまり、クオリティの高いサプライヤとの取引関係が豊富にあり、サプライヤにもメリットのある取引金額もある。また、契約においても特別に複雑な制約もなく、必要なデータも揃っている。さらに、物流や設計部門からの社内の組織的な支援もあるのです。彼の会社が、2桁コストを削減できる機会を逃してしまったのは、ある理由があるからだと思います。その理由というのは、彼の会社の購買部門が、どこかの時点で「オークションは良くない」、という考えを広めてしまったからです。
なぜバイヤーやサプライヤはオークションを嫌うのか?
私は会社へ戻る飛行機の中で、オークションに反対するような流れにいつ変わってしまったのか、そしてその原因は何であるのか考えました。リバース・オークションは10年前頃から流行しはじめ、アリバは”オークションベンダー”と呼ばれるまでになりました(これについては後でお話します)。サプライヤがオークションを快く思わない理由はわかります。なぜならオークションによって、利幅は縮小し、価格競争力が低ければ長期契約を失ってしまうからです。しかし、バイヤーは、競争的な調達を行うことによってコストを効果的に削減することができるにも関わらず、なぜオークションを敬遠するのでしょう。私は、バイヤーがオークションを不安に思う4つの懸念材料に思い当たり、機内でメモに書き留めておきました。
- サプライヤとしてあるオークションに参加し、その結果、ビジネス機会を逃した、あるいは利幅が縮小してしまった苦い経験がある。
余談ですが、私はこれと逆のケースのお客様を知っています。そのお客様は、競争的な調達オークションにサプライヤとして参加し、そのプロセスの効果の高さを実感したことで、「ちょっと待てよ。うちのお客様がこのツールを使って節約できるなら、私たちにだって出来ないことはない!」と思ったそうです。)
- サプライヤとの長年にわたる友好な取引関係が、人間味のないシステム的なオークションのせいで、ぎくしゃくしてしまった。
- 過去に実施した競争的な調達オークションの結果で得たコスト削減機会やメリットを、十分に活用することができなかったため、オークションに幻滅してしまった。
- オークションを行って大幅なコスト削減効果が出た場合、なぜこれまで高い金額で調達をしていたのかと、これまでの自分の仕事を社内で疑われてしまうことを危惧している。
これから最後以外の3つのオークションにありがちな誤解を解き、成功するための競争的調達のメリットを理解することで簡単に解決できます。
オークションにありがちな誤解
まずはオークションにありがちな誤解について取り上げ、オークションに対する不安を取り除くことから始めてみましょう。
オークションは「一般的な商材」だけに使えるもの
実際には、この逆が本当です。砂糖や銅などの商材は、一般に公開されたオープン市場で取引されており、価格には透明性があります。オークションを実施し、市場価格から値下げして長期契約を結ぶことは可能なのでしょうか。その答えとして、もちろん可能ですが、一般的にこうした市場の利幅は少なく、数字に十分な裏付けもあり、コスト削減の努力をしても1ケタのコスト削減余地しかない市場といえます。オークションにおいて最大限の効果を達成できるのは、付加価値が高く、利幅の大きい供給ベースです。現在では、アリバで最も活発的かつ競争的な調達市場は、複雑な機械金属部品やプリント基板のメインユニット、マーケティングサービス、法務サービス、ITハードウェア、コンサルティングサービスなどの「一般的な商材」とは程遠い分野の商材であり、今あげた例はほんの一部にすぎません。
オークションは同じような供給能力のサプライヤが多数いる市場でしか効果がない
ある程度は真実といえます。例えば、サプライヤが1社しかいない市場では、競争的な調達オークションクを実施できないことは明らかです。オークションは奇跡を起こすものではありません。1社が独占する寡占市場や、特許や所有権に絡むプロセスが存在するような場合、あるいは供給能力に制約のある市場では、優占サプライヤとの1対1の交渉が必要になります。しかし、アリバの経験から言えば、こうした状況は稀で、一般的な顧客企業の支出の10%にも満たない部分です。また、競争的な調達でコストを削減するからといって、何十社ものサプライヤを参加させる必要はありません。アリバは、たった2社のサプライヤとオークションを行ったこともあります。適正な方法でオークションを構成すれば、価格を引き下げることができ、真の市場価格を知ることができます。
オークションは単に価格だけの話
これは私がこれまでサプライヤから聞いた中で最も多かった不満と誤解であり、もう10年くらい同じようなことを繰り返し耳にしていることです。私が2000年に、米国でプラスチック射出成形を営む50社以上のサプライヤが集まる会で、オークションのプロセスについて説明し、オークションの効果について話をしました。すると、ある大手企業の代表者の方が挙手され、オンラインオークションに対する不安について発言されました。オークションでは会社の特長、つまりエンジニアリングサポート能力や品質管理部門、成形技術力、顧客へのサービスやサポートといった長所を見せることができないというのです。彼の話によれば、彼の会社は質の高い成形業者であり、その会に同席された他社とは勝負する土俵が違うのだということでした。そこで私は、会場の皆様の意見を聞くことにしました。顧客先でエンジニアリングやツーリングのサポートを実施していない会社はありますか?と質問したところ、手が挙がったのはたったの2社でした。生産や物流のカスタマサポートがない会社はありますか?という質問には、たった1社が手を挙げただけでした。健全なプロセス管理がなく、高品質な形成業者ではないと思われる方は?という質問に至っては、皆無でした。つまり、サプライヤは競争市場において品質やサービスの標準を満たすだけの能力があると思ってよいということです。仮に特別な標準や要件が必要な場合には、それらをきちんと文書化し、それに基づいてサプライヤを選定すべきです。オークションは最良価格を得るためものでしょうか?答えはイエスです。最良価格を得ることを調達目標に掲げていないバイヤーはいないのではないでしょうか。オークションは価格だけではなく、商品やサービス、サポートの質の高さで競合他社と差別化することができる場です。バイヤーは常にトータルコストを踏まえた上で、最適な決断をしています。このような競争要因はすべて、バイヤーの決断に関係してきます。
オークションのメリットは持続せず、実現もできない
この問題は調達部門によって異なってきます。競争調達で得た成果を実現するためには、適切な社員を配置して十分なサポートをしなければ、調達で得たメリットを達成することは不可能です。また、バイヤーによると、オークションは短期的に有利な契約をするには役立つが、契約更新となると、サプライヤは形勢を一転して、値下げした分を取り返そうとするということです。競争的調達に意欲的だったはずが、契約更新時に、再度競争調達し、優良価格で契約しようとしないのはなぜでしょう。アリバと付き合いの長いお客様の中には、契約更新で大きな成功を遂げた企業もあります。契約更新のたびに見積依頼を実施することで、大抵の場合10%以上のコストを削減を達成しています。毎回必ずコストを下げる保証はありませんが、再度競争調達にかけることで、市場のベストプライスを得られることは間違いありません。
オークションはサプライヤとの関係や長年の取引関係を台なしにする
バイヤー(とサプライヤの中でも何社か)に最も多いオークションに対する不満であり、解決が困難な課題といえるでしょう。長期の取引関係のあるサプライヤにとって、競争入札プロセスがどうであれ、ビジネスや利益が脅かされる危険性がある限り、歓迎されるはずがありません。サプライヤは新規取引を獲得しようと努力し、オークションは提案依頼(RFP)や見積依頼(RFQ)への複数の回答を処理するためのひとつの方法であるのが現実です。バイヤーは、主要なサプライヤとの取引関係で大切なことを精査し、それを要件化して文書にしなければなりません。期待値を明確にすることで、既存のサプライヤとの取引関係を定量化しやすくなります。例えば、急ぎの注文を24時間以内に納品してくれる、という理由でそのサプライヤを気に入っているならば、それをRFPやRFQの要件として文書化し、全ての他のサプライヤにも提示しましょう。また、環境や品質標準へのコンプライアンスが必要であれば、それを文書化しましょう。そうすることで、貴社の要件を満たすサプライヤが複数見つかる可能性が高くなり、オークションや競争調達プロセスは、全ての参加者にとってより公平なものとなります。その結果、貴社が必要とするモノを、必要な時に提供し、サービス要件や配達要件を全て満たすことができるサプライヤと長期的な取引関係を結ぶことができることになります。また、サプライヤの立場では、こうした要件を適正な価格でバイヤーに提供するということになります。もちろん、オークションは全てのサプライヤにとって緊張する環境になりますが、適正な方法で実施すれば、これまでの交渉と比較しても長期の取引関係を台なしにするようなことはありません。
オークションは貴社にとって正しい選択なのか?
オークション(あるいは他の競争的な見積プロセス)は、全ての状況に向いているわけではありません。注意事項を整理するのも、アリバ社の得意とするところです。以下は、アリバが10年をかけてさまざまなお客様とオークションについて話をしてきた結果、6つの「C」と呼ぶ指標を作成しました。
1.Contractually Available (契約が利用可能か)
例えば4年契約の2年目で、免責事項がない場合は、オークションを実施することはできません。この場合は、今のサプライヤが市場競争的であり続けることを契約の免責事項に入れることと、価格の維持あるいは値下げを引き出す手段として、契約の更新を利用することをお勧めします。
2.Complete and Clear Data, Specifications, and Requirements(データ、仕様、要件定義は完全かつ明確か)
要件が正しく定義できていれば、競争調達は可能です。サプライヤは、どのような入札形式であっても求められている製品やサービスを完全に理解して、全てのサプライヤが同じ土俵で価格競争し、最終的には契約の要件を満たさなければなりません。しかし、バイヤーが要件を明確に定義できなければ、サプライヤがよく理解できない状況が生じ、全員が同じものに対しての見積りができず、競争オークションの効果を損なうことになります。
3.Competitive Supply Base(供給ベースは競争的か)
当たり前のことですが、成功するオークションの必須条件は、入札者が1社以上いることです。本記事の冒頭で述べたように、仮に1社か2社の主要サプライヤが独占する寡占市場や、今のサプライヤが特許を持つプロセスやデザインがある場合には、従来の(対面式の)交渉テクニックを使ったほうが無難でしょう。
4.Compressible Margins(マージンを圧縮できるか)
「無い袖は振れぬ」という諺がありますが、オークションに当てはまります。アリバはお客様に対して、マージンの大きな支出カテゴリ、または全体コストにおける労務割合が高い支出カテゴリを競争的に交渉することを推奨しています。商品市場は、マージンが薄いことが一般的であり、その中でオークションを適用することはもちろん可能ですが、マージンの大きな市場のほうがはるかに大きな利益を得ることができます。
5.Commercial Attractiveness(魅力的なビジネスか)
オークションを成功させるためには、サプライヤにとって魅力的なビジネスでなければなりません。取引量や取引金額が大きいほど、サプライヤの興味を引きます。サプライヤが注目する取引金額は、市場によって異なります。例えば、年間支出高が100万ドル(1億円)の競争入札では、プラスチック樹脂の主要サプライヤを引き込むには不十分ですが、射出形成部品なら同額でもさらに多くの興味を引くことができます。サプライヤはビジネス機会を見比べた上で、利益の大きな魅力的な取引を探しているということを覚えておいて下さい。もし貴社がある種の装置を10万ドル(1千万円)の競争入札でオークションにかけるとして、他社が500万ドル(5億円)以上の同部品の取引をオークションにかけていたとしたら、サプライヤは、彼らのビジネスにとってよりインパクトの大きい競合他社との取引を選ぶ可能性が高いでしょう。
6.Committed Organization(会社全体がコミットしているか )
オークションを成功させるためには、全ての関係者がオークションのプロセスに参加する必要があります。例えば、もし貴社のエンジニアがプロセスに関与せず、情報を保留してしまうと、サプライヤはビジネスを正確に見積ることができなくなります。また、仮に貴社の購買部門が現行サプライヤとの取引を好み、別途交渉してしまったならば、他のサプライヤに対して不公平になります。オークションのソリューションを効果的に利用しているアリバのお客様は、社内のあらゆる部署にトップダウンでコンプライアンスを徹底しています。共通の目標やプロセスが全社に反映されていることは、競争オークションを成功させる上で不可欠です。
結論
最後に、本記事で強調したかったことは、アリバの調達サービスのグループが、主にオークションのみを実施しているわけではないということです。事実、私がアリバのお客様に実施した調達プロジェクトの中で、オンラインオークションにいたったのは半数以下です。その他のケースにおいては、非オークション形式でRFPと見積を依頼し、お客様と一緒に、トータルコスト的に最善の選択をしてきました。つまり、アリバは単なるオンラインオークションを提供する会社ではなく、お客様にとって最善の方法である場合のみ、調達ツールのひとつとしてオンラインオークションを使っています。「オークション」は決して悪い言葉ではありません。オークションは購買組織が使えるツールのひとつであり、その効果が非常に高いことは証明されています。アリバが過去10年以上かけて蓄積してきたデータによれば、調達プロジェクトでオークションを実施すれば、たとえ双方向にやりとり出来ないような入札環境であっても見積を受け取るだけの場合と比べると、平均5~7%多くのコストを削減できることが明らかです。しかも、オークションによって現行サプライヤから平均3~4%のコスト削減をさらに到達するということもわかっています。つまり、全員がオークションを支持しないとしても、コスト削減の効果を高めるという点では、オークションという方法は役に立つのです。オークションは悪い言葉でも敬遠するものでもなく、バイヤーが総合的かつ最適な支出管理を実施するためのひとつの方法として検討すべき重要なことなのです。
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