データを読み解く
金融市場を動かす”購買指数”に
注目していますか?
Patrick Furey著
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数週間前、通勤電車に乗っていた時のことである。私の目の前に座っていた二人のビジネスマンの会話が聞こえてきました。彼らの服装や会話の様子から見て、おそらく金融サービス業界の人ではないかと思いました。彼らは、住宅着工件数や失業率といった様々なデータを取り扱っているようでした。そのうちの一人が、「今日は購買担当者指数が出る日だ」と言ったのを聞いた瞬間、私は思わず彼らの会話に割り込み、ISM(購買供給管理協会)の生産指数(PMI:購買担当者指数)の今後の先行きと、その指数がバイヤーにとって何を意味しているのか、私の意見を話させていただきました。彼らは礼儀正しく、私の話に最後まで耳を傾けると、次の駅で席を立ち、電車を降りて行きました。
彼らのリアクションを見て疑問に思ったのは、プロフェッショナルの中で、購買や供給管理は一体どのくらい重視されているのだろうということでした。翌日(2009年7月2日)、ウォールストリート ジャーナル誌を開いて目に飛び込んできた見出しに「住宅業界、ISMデータが株価を押し上げる」と書かれてあるのを見た時、私の言っていることは正しかったと確信しました。購買担当者指数は、最新の失業率データやフォーチュン100社の業績発表データほど注目されていないデータかもしれませんが、実際は、世界の金融市場を動かしているのです。
本記事では、ISMが発表するデータの中から、多くの出版物に取り上げられている製造業景気指数(PMI)や非製造業景気指数(NMI)だけでなく、それ以外のさらに細かい指数についても詳しく検証します。実際、ISMの月次報告書を読んでデータを深く掘り下げてみると、今の市場動向を知る付加的データだけでなく、近い将来、世界経済に何が起ころうとしているのかを読み取ることができます。
データの読み方 ISMのホームページでも説明されていますが、ISMの購買担当者指数とは、サプライチェーンのプロフェッショナルに毎月調査を実施し、その結果をISMが指数化したものです。一般的に、総合指数が50を超えれば、業況は拡張、あるいは市場感情が高まっていることを示します。反対に50を下回れば、業況が後退または不況であることを示します。これは、今まさに9カ月以上(製造業では15カ月以上)も不況を抜け出せずに苦しんでいる現在の状態です。本記事は、ISMのデータにフォーカスしていますが、ヨーロッパ市場についてのデータは、Markit Economics(www.markiteconomics.com)から、また中国の製造業についてのデータは、CLSA (www.clsa.com) から入手することができます。
本記事は、総合指数を解釈することを目的としているわけではありません。これについては、本書の後半の地域別特集記事で取り上げます。ここでは総合指数を構成するいくつかの統計について読み解き、これらの数字から市場動向や経済情勢の先行きについて結論を導きだす方法について考えていきます。まずは、製造業および非製造業に共通する数字から見ていきましょう。
新規受注 
NMI、PMIの両方で重要な指数のひとつが、新規受注数指数です。この数字が50を超えれば、新規受注や受注残の兆しは明るいということです。反対に50を下回れば、調査の回答者が新規受注に悲観的な見方をしているか、あるいは受注残が減少傾向にあるということです。一般的にISM指数が48.6以上になれば、北米国税調査局が集計する製造オーダー数が増加することが、製造業の過去のデータからわかっています。
左図のように、商品・サービスの新規受注数は、昨年9月から緩やかに下降しました。製造業は23.1という記録的な低さで12月に底打ちした後に回復し、好不況の統計的分岐点48.6を超えました。同様に、サービス(非製造)業も11月に底打ちしてから回復し、6月には48.6 まで上昇しました。いずれも50は超えないものの、業況が明るいことは確かであり、新規受注数データを見れば、製造業およびサービス業ともに新規取引の受注残が急上昇していることがわかります。
雇用 
多くの経済学者は、今年の年末にかけて米国の失業率が上昇すると予測しています。製造業及び非製造業のISM調査データを詳しく見てみると、その予測を十分に裏付けていることがわかります。いずれも指数が50を上回れば、雇用が拡大傾向にあり、50を下回れば、収縮傾向にあることを意味します。左図のように、2008年夏の終わりの大規模な雇用削減以来、雇用は18か月間以上も収縮し続けていることがわかります。
左図では、雇用増加の明るい兆しが見られますが、いずれの業種も指数が40台前半に留まっており、好不況の統計的分岐点を大きく下回っているということを忘れないでください。ISMの雇用指数は、労働統計局のデータをもとに導き出される傾向があるので、全体的な失業率の回復に先立ち、雇用指数が50を上回ることは当然あり得ます。
価格 
製造業及び非製造業に共通するデータカテゴリは、価格です。価格指数が50を上回れば、サプライヤが値上げし始めたということです。つまり、50を超えると、バイヤーにとってはインフレで、50を下回れば価格に変化がないか、価格が下落する傾向にあるということです。下図のように、サプライヤの値上げという意味では、製造業とサービス業の両方で6月にインフレ心理に転じました。
ISMの調査対象となった購買担当者は、2008年初期のようなサプライヤの強い価格圧力は感じていないとしても、価格崩壊とバイヤー優位の購買市場の時代が終わりに近づいていることは明白です。アリバは、市場がバイヤー優勢か、それともサプライヤ優勢かを決める重要な要素として、価格指数の動向を注目しています。上図を見れば、市場が中立的な方向にシフトしていることが読み取れます。アリバがお客様に戦略的調達をできるだけ早く実施するように提案している理由として、手遅れになる前に、お客様に有利な価格で契約を確保していただくためでもあるのです。
製造業に関するその他データ 
その他のISMデータの重要性を補足する意味で、アリバは、現在や先行きの経済情勢を知る上で欠かせない製造業に関する他のデータについても詳しく検証しています。新規受注数指数は、受注残の強さを意味すると上述しましたが、生産高データの動向を見るためには、受注残と在庫データを合わせて検証していきます。製造業では、在庫指数が42.6を上回ると、経済分析局(米・商務省)が発表する製品在庫データも増加するという相関関係があります。従って、ISMデータが42.6を下回れば、在庫レベルが減少し、42.6を超えれば製造在庫が増加するということになります。製造業の在庫指数は、新規受注数指数と合わせて掲載されています。 この2つのデータを突き合わせて見ることで、生産高の先行き動向や生産指数を探ることができます。単純なことですが、新規受注数指数が2008年下半期のように下落すると在庫レベルが減少し、生産高も縮小することが予想できます。新規受注数が上昇し始めた場合、新規受注数指数と在庫指数の間がどの程度差が開いているのかを見ます。過去半年のように、新規受注が増え続け、在庫が減り続ければ、2つの指数の差はさらに大きくなります。メーカーは注文を満たすために在庫を補充しますので、生産指数が上昇するのが一般的です。上図は、この傾向を表わしています。
今後3~6カ月の間は、生産指数の動きに注目しましょう。新規受注数と在庫の差が開けば、指数は当然上向きます。この傾向が継続すれば、製造業が先行して不景気から抜け出ることが期待されます。反対に、新規受注数が減少すれば、生産指数は瞬時に50以下に逆戻りし、製造業界の景気低迷は尾を引くこととなるでしょう。
サマリー 現在のような情報化時代では、時にどのデータが自分の仕事や組織にとって重要なのかを見極めるのが困難な場合があります。サプライチェーンや購買の担当者ならば、ISMやMarkit Economics、CLSAなどのデータを常に手元に置いて活用することが重要です。本記事で使用したデータは、製造業やサービス業の業況を紐解く鍵となるインサイトを示唆しています。
- 新規注文数は、商品およびサービスともに拡大と収縮のほぼ分岐点にあり、新規受注残の先行きが明るいことは明確です。
- 製造業、非製造業のいずれの業界でも、雇用は過去4カ月の急落した状況までは及ばないにしても、継続して縮小しています。雇用が景気回復を遅らせていることが予想されますが、ISM指数の動きからは目を離さないように注意していきましょう。政府の発表したデータより先行してISMが景気回復の兆しを示唆する場合が多いです。
- 本書の後半で引用しているダウジョーンズの商材指数や個々のカテゴリ指数のデータと価格指数は一致しています。製造業、サービス業のいずれの業界も価格は底打ちし、今後6ヶ月はやや高い水準で推移していくでしょう。
製造業では、新規注文数が急増し、在庫が減少し続けたことを受けて、5月、6月の生産高が当然のことながら上昇しました。これは、景気が底を打ち、これから広範囲に景気回復へ向かうことを示しています。私たちは暗闇から抜け出すことができたのでしょうか?いいえ、まだ当分先だと言えます。しかし、サプライチェーンや購買の担当者の方であれば、市場動向をすばやくキャッチすることができるデータにアクセスでき、迅速に判断することで、会社だけでなく、自分のキャリアにとってもプラスとなるような大きな価値を手中におさめることができます。ウォールストリートや金融業界で働くアナリストの方なら、データに注目しましょう。
SupplyWatch 2009年第2四半期(英語版)全文のPDFダウンロードはこちら
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