SupplyWatch

プラスチック、ゴムおよび原材料

Bob Zieger著
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エグゼクティブ考察

2008年前四半期、石油化学品市場では、過去数年間で最悪ともいえる急激な市場価格の暴落が起こりました。原油価格は1バレル50ドル以下に急落し、川下製品や関連製品の価格も急落しました。需要が沈滞したため、OPECによる産油カットの発表や中東紛争による原油価格下落の影響を受けませんでした。また、主要な化学製品やプラスチック、ゴム加工市場では世界的に需要が枯渇し、第4四半期の生産は実質的にストップしました。この不況下で、原材料価格はこれまでにない水準まで下落しました。

以前までのバイヤー企業の課題は、需要が流動的な時期、いかに有利な調達条件を引き出せるかどうかでした。2008年、既存のサプライヤが上乗せした価格を見直し、価格を引き下げることに多くの企業が取り組んできました。バイヤー市場へ急転換したという認識が広がり始め、あらゆる原材料カテゴリにおいて、材料コストの削減計画を積極的に推進する企業が増えています。

  • 前四半期は、石油化学価格が続落し、2004年、2005年時の水準まで落ち込みました。ベンゼンやブタジエンなどの主要中間製品は75%以上下落し、それに続いて、プラスチック樹脂製品やゴム材が、第4四半期だけで40から60%ほど下落しました。無機化学製品(苛性ソーダなど)の中には高値を維持したものもありましたが、無機化学製品(特に化成肥料)は、2008年末にかけて急落しました。

  • 生産活動の減速は、沈滞した需要には対応できませんでした。生産活動は、全体として過去30年間の最低水準にまで下がったものの(ISM調べ)、プラスチックやゴムのサプライチェーンにおいて、在庫の大幅な削減は実現できませんでした。現在の成形・組立部品市場において、バイヤー企業はサプライヤの財政的実行可能性を慎重に配慮した上で、大幅にコストを削減する余地があると認識し始め、調達活動はかなり活発になりました。

世界経済についての悲観的なニュースが続きます。特に、アジア生産の中心である中国では、2008年の化学業界における年間成長率が過去5年間で最低(1%未満)となり、2009年初期にかけても収縮する可能性が高いという予測を発表しました。イギリスでは、プラスチックとゴムの生産が15年ぶりに最低水準まで下落しました。経済情勢において増え続けているのは、失業率と破錠するメーカー数のみといえますが、アリバでは、不況を調達に有利に利用しようとしている企業にとっては、今後第2、第3四半期は、非常に魅力的な調達条件になるだろうと見ています。

米国原油スポット価格

調達に関するトップ分野

  1. 射出成形プラスチック・ 生産過剰な加工業者には、この不況下で自社工場の生き残りをかけて錯綜し、これまでにない厳しい競争市場になっています。プラスチック樹脂価格と輸送コストが世界的に落ち着いたことで、低コスト国から多くの加工業者が再戦しています。市場競争の高い商材で、前四半期に平均12~17%のコストを削減し、第2四半期の平均を3%上回りました。樹脂価格は、2007年以前の水準で推移し、製造業の世界的な景気回復は最低でも6か月以上先になると予想されており、2009年第1四半期は、コスト削減の大きなチャンスとなる可能性があります。また、この商材は、本来調達に適している商材ですが、今がまさに絶好のタイミングだといえます。供給ベースが広がったことで、様々な樹脂タイプや特殊加工、2次組立を適用した製品を含め、あらゆる業種で成形部品のコスト削減の機会があります。

  2. 成形・打抜ゴム部品 ・ ゴム原材料価格は、ブタジエンの供給が少ない上に、ゴム価格が第4四半期まで高値で推移したため、熱可塑性プラスチック市場に1、2ヶ月遅れて動きだしました。しかし、自動車市場の崩壊とともに、ゴム需要が世界的に収縮したことで、天然ゴム価格は急転直下し、四半期末までには合成ゴムも急落。まもなくブタジエンが供給過剰となり、スチレンブタジエンゴム(SBR)価格は、25%近く下落しました。同業界の見通しは暗く、ゴム価格は最低でも翌、翌々四半期まで低水準で停滞すると予測されます。ゴム素材の部品市場では、原材料価格の圧力が弱まったと同時に過剰生産になったことで、サプライヤの競争が激化しました。特に、サプライヤが細分化され、間接費が高い成形・打抜部品や共通加工品での厳しい競争が見られます。これらのサブカテゴリの前四半期のコスト削減高は、平均10%から17%となり、約5%増加しました。この傾向から、今後数カ月は、さらなるコスト削減効果が期待できると思われます。

  3. 溶剤・潤滑剤 ・ 溶剤・潤滑剤の大量生産は、原油の副産物精製ストリームに大きく依存していることが多く、根本的なコスト圧力の影響を受けて前四半期に価格が急落し、2008年初めから続いていた厳しい調達状況が急反転しました。ベンゼン価格が3カ月で1ガロン4ドルから1ドル以下に暴落し、特に芳香族ストリームが影響を受けて大幅下落しました。これがきっかけとなり、溶剤・潤滑剤用品において調達が見直されました。潤滑剤に使われる基本油価格は、四半期で25%から40%ほど下落し、さらに価格が下がる可能性があります。主要適用製品の指定調達先を複数持ち、調整できるような企業は、こうした状況を有利に活かすことができます。今の段階で基準価格を設定し直し、競争力を確保しておくのが理想です。

  4. 工業用プラスチック樹脂 ・商材樹脂や中間原材料の価格が急落したことで、工業用プラスチックにも同様の事態が起こりました。コストを考慮すると、特殊樹脂の価格は、2007年以前の水準近くになるはずですが、同市場の寡占サプライヤの生産能力や市場での価格支配力が勝っているため、特殊樹脂は価格圧力の影響をすぐには受けないケースが多いといわれています。サプライヤもわかっていることですが、大抵の場合、バイヤー企業には(様々な理由から)サプライヤを取り替えるような柔軟性がなく、市場情報を元に巧妙に交渉するのが単独調達における最善のアプローチですが、指定調達先として代替サプライヤを持つことは必要です。また、本当の意味での特異な樹脂というのは非常に少なく、工業用化合物や合金は(特に米国では)、独立系合成業者が生産しているため、大幅なコスト削減効果が期待できます。

トレンド市場情報景気後退で加速する化学品メーカーの削減策

化学品市場では、前四半期中に経済情勢がさらに悪化し、化学品業界では多くの工場閉鎖や解雇がありました。BASF(ビーエーエスエフ)社の発表によると、化学品メーカーは約80%の工場を一時閉鎖し、その他100拠点で生産をカットすると報じられました。ダウ・ケミカル社は、1万1千人を削減し、世界で20施設を閉鎖、その他180拠点を遊休化するという衝撃的な削減計画を発表しました。LyondellBasell社は自己資本率が低く、生き残りをかけて15%の人員削減と大幅な生産カットを発表しましたが、その後、民事更生法の手続きを申請しました。デュポン社も世界で約6千5百人の削減を発表しました。これらのニュースはまだ世界の化学品メーカートップ10社のうち4社に過ぎず、需要が減少した中で、小規模メーカーや下流の加工業者も普遍的に苦しい決断を迫られています。

アリバの見解:
今回起こった暴落の状況を考えると、これ以上最悪の事態は起こり得ないだろうと推測します。今やコストの精査は、会社の生き残りと人員維持をかけた深刻な問題になってきました。この状況の中での唯一明るい点は、デフレ状態の化学サプライチェーン全体を見直せば、コスト削減のチャンスがあるということです。その反対に、コスト削減のタイミングを待てない企業も多くいます。市場が回復した時に競争優位でいるために、今こそ行動を起こし、企業の利益性を安定させておくことが非常に重要だといえます。

合併取引の決裂
K-Dow Petrochemicals ジョイントベンチャーが誕生する数日前、クウェート石油公社が150億ドルの取引から突然手を引いて業界を驚愕させましたが、ダウ・ケミカル社は、その対応に奔走していました。クウェート政府は11月にダウから市場ベース(約15億ドル)の妥協案を引き出したにも関わらず、今の経済状況においては本契約の実行は不可能であると釈明しました。ダウ・ケミカル社はこの判断によって、Rohm & Haas 社の買収に充てる予定だった90億ドル相当の資金計画を失い、この取引の実現可能性が危ぶまれています。ダウ・ケミカル社は、代わりの資金策があると冷静を保っていますが、今後の動きが注目されています。

HuntsmanとHexionの106億ドルの合併は、Hexion社の取引解約をめぐる法的画策が数か月続いた後、正式に破棄されました。当初、裁判所はこれを阻止し、Hexion社に合併契約を完了するように命じましたが、取引の財政支援が破綻したことから、両社は金銭的に和解しました。

アリバの見解:
世界市場がさらに後退ムードになり、企業合併が困難な状況になってきました。化学品メーカー は、大型合併の決裂を機に、合併リスクに対してより慎重になり、企業統廃合の動きが短期的に限定されてくると思われます。バイヤー企業にとってはビジネスチャンスですが、この状況は長くは続かないとみています。業界再編に勢いがあり、財政的制約が緩和されれば、2009年末までには元の状況に戻るはずですが、(可能な限り)主要な化学品については、最低でも2社の代替調達先を選定し、有利な価格条件を引き出して供給リスクを低減させておくことを推奨します。今こそ、市場の競争性を利用した大幅な削減効果のチャンスだといえます。

米国自動車業界の展望
第4四半期の主な経済トピックのひとつに、米国自動車メーカーの経営状態と政府支援の救済措置、特にGM社とクライスラー社への救済措置にまつわる論議がありました。自動車業界は深刻な不景気にあり、ビッグ3を破綻させないためには政府の資金注入が必要です。非常に厳しい中、自動車ビジネスに過剰集中しているサプライヤの生き残りが特に危惧されており、これらのサプライヤが経営破綻する可能性があります。

アリバの見解:
米国自動車メーカーがこれから1年持ちこたえるためには、救済措置が必要になるだとうと多くのアナリストが提言しています。しかし、ビッグ3の資金能力を維持するためには、大きな対策を講じることが必要になります。ビッグ3の破綻を受け入れるには、政府、組合、経営陣、サプライチェーン取引先等、あまりにも多くの人が関係しています。例えば、プラスチック加工業者は、自動車業界の不安定な状況に影響されないように表面的な努力はしていますが、実際には自動車業界との関係を絶とうとしているのは極少数で、大半は継続的な関係を切望しています。自動車業界での足場を維持しつつ生き残る企業は、市場が回復すれば、これまで以上に強い企業となるでしょう。長期的な見通は明るく、自動車用品は、世界のプラスチック消費全体の約7%を占めており、自動車技術分野の一人当たりのプラスチック消費量は、いまだに大きく伸びています。たとえ厳しい状況の自動車業界であっても、市場の不安定な中での戦略的調達は実施するべきです。

その他の有効なカテゴリー
カテゴリー 平均削減率 コメント
 押出プラスチックフィルム 9~13%

フィルム市場は、圧倒的にポリオレフィン(PEおよびPP)を原料に使用していますが、プラスチック樹脂の中で最も価格が下落しました。押出製品の需要は、成形部品と同様に低下し、生産能力過剰となったフィルム変換業者は積極的にビジネス交戦することになりました。

無機酸および肥料用化学 2~8%

金属および肥料市場の需要が下降沈滞し、2008年第4四半期中の硫酸・リン酸価格は25%以上下落しました。肥料価格は年末さらに大幅下落し、弱体化した同業界は、高度インフレ化し、厳しい修正となりました。硫酸、尿素、アンモニア価格は、75%以上も暴落して年間の底値にまで落ち込み、スポット取引には大きなチャンスとなりました。今こそ、契約基準価格を見直す時です。

 燃料 0~5%

燃料価格は、原油価格下落を受けて、全面的に大幅下落となりました。大手総合石油精製企業は、いまだに同市場を支配しているものの、この状況下で需要刺激のために協力しようとしています。バイヤーは金融ヘッジ策を見直し、インフレリスクを緩和し、今日の市場価格(に合わせた)条件を有効に活用しています。

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