ファイナンシャルニュース ・ 今こそ行動のとき
これまでにない世界的な不況の中、短期的な景気回復の兆しは見えない。
そんな中で笑みを浮かべている購買管理者がいるのでは?
Patrick Furey著
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先日、ある購買会議で講演した際、アリバのソリューションを利用している間接材管理者の方とお話する機会があり、市況に関する私の講演内容についての感想を尋ねたところ、その購買管理者の方は、こう返答をされた。
「私は10年以上直接材の購買に携わり、数年前に間接材の購買部門へ異動しました。異動について後悔したことはありませんでしたが、昨今の原材料価格の急落やサプライヤの生産能力過剰など、あのまま直接材の購買担当者だったらサプライヤと形勢逆転できたのに、と思わざるをえません。」
つまり、これは昨年10月初旬頃から11月にかけ、直接材市場が完全に反転したということを意味しています。原材料価格の急落とともに、未曾有の世界不況という認識が広がり、サプライヤは余剰生産能力の市場競争を、そしてバイヤーは原材料価格の下落にともなう契約内容の見直しを余儀なくされました。その後、間接材やサービス市場にも、これと同様の事態が起こりました。サプライヤは市場シェアを獲得せざるを得ないため、バイヤーにとって、マーケティング、メディア、輸送などあらゆる分野における取引交渉を優位にすすめることができるようになりました。まさに今こそがバイヤー市場であり、行動を起こす時といえます。
データ検証
半年前、あるアナリストが原油価格予測を1バレル200ドルとしていましたが、なぜ突然の価格破壊が生じたのでしょうか。毎日のようにニュースで報じられていることを、本章で繰り返し説明するつもりはありませんが、現在の世界的不況について、多くの経済学者が次のような主な要因を指摘しています:
- 米国で住宅需要が落ち込み、それが欧州へ波及した
- 住宅需要の低迷が金融危機を招き、世界中に急速に広まった
- 金融危機により銀行が貸し渋り、消費が低迷した
- 消費が冷え込み、米国の製造業の景気が(自動車業界に牽引されて)後退し、リストラが続出し始めた
- 相場下落前、人為的に価格高騰していたコモディティ市場が理性無く空騒し、投機されている
購買管理者指数
供給市場が全体的な経済状況に合わせて動く中、ここに購買のエキスパートとして知っておくべき主要指数があります。米国では、供給管理協会(ISM)が製造業(PMI)および非製造業(NMI)についての供給市場活動の指数を発表しています。欧州では、同データをMarkit Economicsから、また中国における製造業データはCLSAから入手することが可能です。以下は、2008年度のデータ要約です。

この指数は、雇用や在庫状況、先物や価格予測など、さまざまな分野の主指標を組み入れて算出されており、供給業界の全体的な状態を正確に測ることができます。原則として、指標値が50を超えると市場は拡大モードであり、50を下回ると収縮もしくは後退しているということになり、この基準方法を基に指標を見ると、製造業とサービス業が世界的に不況であることがわかります。さらに時間軸で詳細にみても、今は景気後退の時期であることがわかります。
- 米国の11月におけるNMI は37.3、ISMは過去最低。12月におけるPMIは32.4となり、1980年6月以来の最低値となった
- 12月にMarkitが報告したNMI は42.1、PMI は33.9。欧州で過去最低の活動指数を記録
- 中国におけるPMIは5か月連続で50を下回り、急速に経済成長している同国にとっては前例のない数値だった
既に周知のことではありますが、これは次のようなことを示唆しているといえます。
- 現在、世界的な不況だということ
- この不況は、製造業とサービス業にダメージを与えていること
- サプライヤの生産能力が余剰し、サプライヤは業績を維持し、市場で生き残るための激しい競争が起きるということ
インフレ
物事を単純視するわけではありませんが、バイヤーが注意すべきことは、インフレについての市
場情報です。鋼鉄やプラスティック樹脂などの原材料を直接取引するバイヤーにとって、その価格動向を監視することと、契約内容に原材料価格に連動した価格調整条項があるような場合には製造部品の契約内容を確認することが重要です。サービスや間接材のバイヤーにとって賃率や燃料コストの動向確認が大切であるのと同様、直接材のバイヤーにとって鉄鋼や樹脂の動向を確認することが非常に重要です。
米国商務省や世界銀行、ウォールストリートジャーナル、IMFなどに代表されるような情報源が発行するマクロ経済的な消費者価格指数を見れば、インフレを監視することができますが、企業の購買エキスパートの立場として、下図のような米国商務省が発表する生産者価格指数や輸出入物価指数の動向も確認しておくことをお勧めします。

上図を見ればわかるように、生産者価格は7月以降、平均10%近く下落し、輸出入価格は同時期に20%以上下落しています。次の項では、金属・プラスティック原材料市場における60%強の下落、失業者数の増加とそれに関連した賃金圧力、原油価格が半年弱の期間に1バレル140ド
ル超から40ドルへと急落したことなど、アリバ社の商材管理者が主要な市場のデフレ傾向について詳しく説明していきます。こうしたデータやマクロ情報は、インフレが正常化し、よほどの異常事態が起こらない限り、今後数年間は商材価格の記録的高騰はないだろうということを購買エキスパートの方に教えてくれています。
バイヤーとサプライヤにとっての重要事項
製造と購買分野の仕事に20年間携わってきましたが、現在ほど急激な価格転換や、余剰した生産能力に苦しむサプライヤの状況を見たことがありません。前四半期は、全業種、世界中の全地域の”市場の底が抜けてしまった”といえます。
これまでアリバでは、カテゴリーをウェーブ1、ウェーブ2、ウェーブ3に分類しています。ウェーブ1に分類されるのは、市況がバイヤーのコスト削減効果に伝導するもの、ウェーブ2は、調達コストの削減が期待されるが優先順位はそれほど高くないもの、ウェーブ3はコスト回避的な市場が分類してきましたが、現在の市況を考慮し、ふたつのカテゴリーのみを使って分類するよう変更しました。そのふたつのカテゴリーは「今、調達すべきもの」と「その次に調達すべきもの」です。つまり、市場独占的なサプライヤから単独で調達している場合や専有技術を使っている場合を除けば、全てにおいてコスト削減交渉が可能だということです。価格の下落、サプライヤの生産能力余剰という状況において、バイヤーは確実に主導権を握っています。今こそ、バイヤーが行動を起こす時なのです。
市場が向かう先
アリバでは、市場価格動向についての質問をよく受けますが、この問題については次の項で説明します。通常では、マクロ的に、政府や世界の金融情報源を使用してGDPやインフレ予測を見て判断します。
GDP データ
アリバでは、国際通貨基金(IMF)のデータを使い、世界中のGDPデータやGDP予測を監視しています。国レベルの情報が入手できますが、アリバは主に2つのデータセットに着目します。ひとつは、米国、日本、欧州の成長率を表すデータ、もうひとつは、中国やインドなどの急速に経済成長を遂げる国の成長率を表すデータです。以下は、2006年から2011年までのデータです。

これらのグラフは次のことを示しています。
- 2008年の成長率が世界の全地域で鈍化
- 2009年はさらに成長率が鈍ると予測
- 世界市場は2010年に回復するという予測
景気の好転時期についてもう少し詳しく調べるために、米国商務省が発表したGDPデータとウォールストリートジャーナル世論調査の成長予測をここで検証します。以下はその図です。

上図は、米国経済の回復時期を正確に示しています。もう少し明確に言うとすれば、2009年第3四半期、あるいは7月~9月期から回復に向かうことになります。アリバは、この評価と同じ意見ですが、政府の景気刺激策が成立し、公民ともに融資や雇用が活性化すれば、遅くとも5月には回復の兆しが見えるのではないかという楽観的な見通しをしています。
インフレ
最も正確かつ普及しているインフレデータは、IMFが発行しているデータです。残念ながら消費者価格のデータしか利用できませんが、上述のGDPの項にある各国データを使った図から、インフレ傾向を導き出すことはできます。

上図から、次のようなことが読みとれます。
- 2008年は世界規模で物価指数が上昇したが、それはほぼ年度初旬であった
- 適度な物価指数傾向が2009年から2011年にかけて続くと予測されている
- 商材価格の急騰は、今後2年間はないと予測されている
アリバの見解
アリバは上述のように、第2四半期後半もしくは第3四半期前半に、世界経済が不況から脱出するという予測と同じ見解をしています。また、第1四半期末までに下方修正される可能性はありますが、商材価格は最低水準に近いと見ています。また、失業率は景気回復よりも通常遅れますが、政府の景気刺激策が早期に通過すれば、米国では6月までに8%を上回り、年末までに9%になる可能性が高いと予測しています。
主なポイント
次の項では、アリバのカテゴリー管理者が市況について説明していきますが、主に調達やコスト削減の効果が出やすい分野について特に言及しています。本書は、購買管理者の方々に行動を起こすようにお願いをするという位置付けで書かせていただいているとお考えください。今こそがバイヤー市場なのです。あらゆる業種や商材分野における購買エキスパートの方にお伝えしたい点が2点あります。
- 2009年の調達候補を再検討する
昨年9月か10月頃に2009年度の事業計画・優先課題を設定された企業が多いと思いますが、現在の経済情勢は全く異なっています。アリバは、お客様に2009年度の調達候補と行動計画を見直すように呼びかけています。昨年10月には交渉できなかったカテゴリーが、今では可能な状況になっているからです。全ての購買計画を見直しし、予算や削減計画を再構築し、情勢をうまく利用した早期実践に向けて、新たなスタートをきりましょう。
- 再交渉、調達で、より多くのコストを削減を実現
未曾有の原材料価格下落、サプライやの生産能力余剰など、今こそコストを削減すべく行動を起こすべきであると考えます。もし現行の契約が、2008年7月から9月の最高値で交渉されたものであるならば、市場のコストドライバに関するデータを元にしたサプライヤとの再交渉には今が絶好の機会です。契約の価格調整条項もしくは契約を白紙に戻すべきか、見直しの方法は様々です。また、今が契約更新の時期である場合、低価格で契約を固定し、競争力を高めていく絶好の機会ともいえます。株についての古い諺がありますが、購買の世界にも通じます。「安く買って、高く売る。今は安値、買い時です。」
- サプライヤの資金状況を監視
お客様に調達やコスト削減を積極的に推進する中で直面した最大の課題は、既存サプライヤ、
新規サプライヤの財政状況でした。この点については、即座に解決すべき問題です。経済状勢は、2009年も厳しいものとなると思います。商品やサービスを継続的に確保していくため、主要サプライヤの財政状況を厳しく監視し、定期的な査定を行いましょう。個々のサプライヤとの取引関係のリスクを評価し、厳しい状況のサプライヤの支援対策とともに、何かあった場合に備えた計画を立案しておくべきです。サプライヤを救済するために、必要に応じた支払条件を臨機応変に変更し、サプライヤの業務コストを改善するプロジェクトを開始する必要が出てくるかもしれません。
リソース不足や厳しい予算、サプライヤの財政支援について不安を感じている企業が多いと思いますが、今はバイヤーにとって最大の機会ととらえ、購買エキスパートとして、コスト削減を実現できる重要な存在であることを認識し、社内でさらなるコスト削減を実施していくべきであると考えます。
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