SupplyWatch

製品安全性を脅かすリスクを回避のために、企業が今できる事

Mattel社が中国産の玩具1900万点を自主回収」
- 2007年8月15日、ニューヨークタイムズ誌

「中国、汚染歯磨きを調査」
- 2007年5月22日、ニューヨークタイムズ誌

「汚染ほうれん草の出荷元と見られる業者を特定」
- 2006年9月16日、ニューヨークタイムズ誌

予防、診断、治療/処置最近、製品の自主回収や製品安全性に関する事件が多発しています。このような問題への企業対応は、例えて言うならば”病気の治療”と同様で、左の3つの方法があげられます。

 

当然のように、それぞれにかかるコストや労力は、対応範囲に応じて増大していきます。また、事件が発覚し、製品回収や訴訟が起きれば、回避策にかけるコスト以上の莫大な費用がかかり、企業ブランドを脅かすリスクにもつながります。

消費財において、経営者が重視すべきミッションは、企業ブランドを築き、それを守っていくことです。これは、生鮮食品、玩具、ペットフード等、どのような製品にも共通して言えることです。企業は、消費者の目に映る自社ブランドを守るために最大限の努力をするべきであり、消費者が目を向けているのは、サプライヤでも下請企業でもなく、社会的に責任ある立場としてのバイヤー企業であるということをよく覚えておくべきです。

実際の取引規模に比べ、限られた情報量しか持ち得ない政府による監視や検査に頼っているだけでは不十分であり、規定に準拠するだけでは効率が悪いため、独自の予防対策プロセスを確立することが望ましいと言えます。


安価な”予防薬”は高価な”治療薬”に値します。 = 転ばぬ先の杖

消費財における安全性を”病気”に例えてみた場合:

消費財における安全性

本文では、消費財における安全性を”病気”に例えて、次のような点について考察してみます。

  • 製品安全性を脅かすリスクの緩和
  • 製品安全性において、サプライヤに期待することの明確な伝達
  • サプライチェーン業務の可視化
  • 商材毎ではなく、全事業分野に適用できる一貫した評価の枠組みの確立
  • 問題の発見と発生時の対応能力の強化

最近の事件についての消費者とメディアの意識の高まりや連鎖するサプライチェーンが絡み合い、企業の安全対策をこれまで以上に困難にしていますが、製品やサプライヤだけでなく、企業リスクを把握するためのプロセスや膨大なデータ管理のためには、テクノロジーを使用した体系的アプローチが必要不可欠です。

 “予防”にフォーカスする

予防

優れた”予防”対策は、次の4つのポイントに分けられます。

  • 調達プロセスの改善
  • サプライヤの現場視察
  • 製品検査と報告
  • サプライヤ業績管理とスコアカード

1から4までのステップは全て重要な位置付けにあり、ステップがそれぞれつながっています。

ステップ1:調達プロセス

ステップ1:調達プロセス

サプライヤと取引を開始する前に多くの時間をかけることが非常に重要であることは、調達担当者の方はよくわかっていることと思います。慎重にサプライヤを評価、選択し、強制力のある明確な期待値を基準として設定することで、企業リスクを緩和することができます。

RFxの期間中、一貫した戦略的調達プロセスや適切な質問及びテストを実施し、サプライヤとのコミュニケーションやサプライヤ評価をするために適切なツールを使用することは、調達プロセスにおいて必要不可欠なことです。革新的な企業では、具体的に次のようなステップを取り入れています。

  • 製品の安全対策や認定に関する質問を情報依頼書(RFI)に含める
  • サプライヤ候補に提出するベンダー選定基準書に、製品安全対策の要望事項を含める
  • 全サプライヤ、入札者、商材カテゴリが、共通の標準設定(もしくは変更が明確になったもの)に準拠させ、サプライヤが体系的なプロセスをオンラインで利用することができるシステムを利用して全てのRFx回答を回収する
  • オンライン入札では、価格以外の条件も設定できるように、複数属性の設定が可能
  • 製品安全性に関する属性をサプライヤ選定のためのスコアリングの仕組みを構築し、導入する (例えば、落札基準の40%を価格、20%をサービス、25%を製品安全性へのコンプライアンス、そして15%を品質評価に設定する等)
  • 製品検査や現場視察、認定更新を落札条件にし、早期段階で期待値を設定する
  • RFI(情報依頼書)や提案依頼書(RFP)、契約書に製品保証に関する条文を含める
  • 正式な取引先となった場合のサプライヤ実績評価に継続的に使用するツールやプロセス(例:スコアカード等)について、事前にサプライヤに説明する

このように調達プロセスの中で設定したサプライヤに対する期待値や要望は、その後のサプライヤとのやり取りの基盤となります。

ステップ2:サプライヤの現場視察

ステップ2:サプライヤ現場視察

明確な調達プロセスの構築だけでなく、サプライヤの現場視察も重要なステップの一つです。この”現場視察”とは、サプライヤへの挨拶訪問のことではありません。この現場視察の目的は、既存サプライヤ及びサプライヤ候補から正しい情報得ることであり、体系化しておくべきステップです。アリバでは、毎年、世界中で何百社というサプライヤの現場視察を行っていますが、バイヤー企業が正しい情報を正しい形で得ることができるよう全て規定のプロセスに従って行われています。現場視察を計画する際には、以下のことを考慮します。

  • 視察の明確な目的
  • 情報収集についての体系的なテンプレートや質問項目
  • 客観的で統一された評価手順と規約
  • スコアリングやオンラインで使用できるよう、情報を一箇所に集めて一元化管理する方法

例えば、アリバでは、生産拠点の標準的な評価プロセスにおいて、組織構造や財務状況、契約情報といった標準的な項目の他に、40以上ものスコア化された評価指標を用意しています。これらの評価指標には、業務手順書、プロセス管理、安全対策、技術力に関する項目が含まれています(この例はアリバのバイヤー顧客が提供したものです)。

評価プロセスは、サプライヤ企業の基本的姿勢に焦点を当てることで全ての業種や製品グループのサプライヤに適用できると共に、ある特定の製品のみを重点的に評価するように変更することもできます。(例えば、塗料の安全性等)

現場を視察した後は、調達プロセスで設定した評価指標と照らし合わせて、施設の客観的な総合スコアを決定します(下図を参照)。これに関する情報は、視察結果や報告書と共に、サプライヤ業績管理システムにおいてスコア化していきます。

総合スコア

最近起こった玩具業界における製品回収で留意すべき点は、サプライヤの供給元についても現場の監査や視察を忘れないようにすることです。これは、生産工程の全ての局面を見直しできるように、部品表の入庫検査から生産、出荷までを追跡するという簡単な方法で実施します。どの工程が外部に委託されているのか確認し、入庫検査にまで遡って原材料を調査することで、安全性の問題を回避することができます。

ステップ3:製品検査と報告書

ステップ3:製品検査と報告書

製品安全対策を実施することは、全ての消費財メーカーにとって、ビジネスを成功させるための重要な要素の一つです。また、製品検査は、通常行われるべき業務でなければなりません。最近起こっている事件を見ても、製品検査の重要性はおわかりになると思います。

業種や製品要件、または規制要件によって検査方法は異なります。一般的に、アリバを導入しているバイヤー企業は、自社で検査しているか、その製品に特化した専門会社に委託して実施しています。

検査の頻度においても、製品や業種によって異なります。自主回収事件を受け、玩具業界のトップ企業は、全ての生産ロットの全部品を検査する(100%検査)方針を立てましたが、一時的な処置であるとはいえ、これはかなり極端とも言える対応です。一般的な検査は、生産ロット毎に、統計的な視点で重要と思われるサンプルにのみ実施するべきものであり、ロットのトレーサビリティ(追跡力)に関しての書類を作成します(電子化できれば尚可)。このような対応をしておくことで、例え問題が生じたとしても、すぐに問題のある部分を特定し、その部分を他と切り離して対処することができます。

重要なことは、以下のように体系的なフレームワークの中で検査プロセスを統合することです。

  • 単一のリポジトリを通して、組織全体の結果を可視化する
  • 最新結果を随時更新していくメカニズム
  • 例外処理のレポート機能を使用して、潜在的な課題分野を警告する
  • 全ての業務プロセス及び製品分野において、一貫性を確保する
  • サプライヤ業績評価やスコアカード等の枠組みに、検査結果を取り込む
  • 検査や報告に関する要件とサプライヤのリベイトや保証に関する指標を紐づける

ステップ4:サプライヤ業績管理とスコアカード

ステップ4:サプライヤ業績管理とスコアカード

サプライヤを適正に評価し選定した次のステップは、サプライヤとの取引契約を忠実に実行することが重要です。スコアカードや業務管理をシステム化することで、体系的な評価測定と評価結果が可能になれば、客観的で公平なサプライヤ評価や、単一のリポジトリから全ての情報を閲覧することができるので、継続的な改善が容易になります。以下は、サプライヤ業績管理やスコアカードを使用しての効果的な業績とリスク管理のタスクです。

  • 市場の最新動向を取り入れる : リスク管理やサプライヤ業績管理のプログラムをRFI(情報依頼書)やRFP(提案依頼書)に取り入れる
  • サプライヤ情報の細分化- 支出状況だけでなく、事業への影響度(競合、契約の満了日等の情報含む)や製品リスク等、一般的な条件でサプライヤを詳細に整理し、最も優先的なサプライヤを把握することに時間をかける
  • 測定可能で一貫性のある業績基準を明確に定義する
  • できるだけ広範囲に適用できる標準的基準や業務プロセス及びシステムを構築することで、同じようなサプライヤを同一条件の元で客観的に比較することが可能。また、サプライヤへの順位(ランク)の通知や優れた実績を確認することができる
  • サプライヤの順位付けは、調達頻度が高く、競争の激しい分野で特に大きなメリットがあり、過去のスコアカード結果を、次ぎの調達(入札)に考慮することができる
  • 全サプライヤの業績評価の最低基準を定める(達成できなければ業績の改善計画やリベートが必要など)。プログラム導入時にサプライヤとの間でこのことを明確にしておき、スコアカード情報を確認しながら管理する
  • 例外処理の警告 - 例外処理に対するアラート機能によって、最低基準を下回ったサプライヤを検知し、そのサプライヤに改善対応を促すことができる

リスク管理とサプライヤ業績管理は現在、注目されている機能です。近年の製品自主回収の事件を見れば、今後も重要性を増してゆくことが予想されます。バイヤー企業において、業務プロセスの確立やシステムが導入されていても、製品安全性におけるリスクを完全に取り除くことは不可能ではありますが、下記のような対策を施しておけば、想定外の出来事にも万全の体制で対応することが可能です。

  • バイヤー企業側の監視プログラムとプロセスを証明するための文書
  • 入札者のRFI(情報依頼書)/RFP(提案依頼書)への回答やサプライヤのスコアカード情報の履歴管理
  • 警告や対応策の記録
  • 訴訟が起こった際にすぐに提出できる情報の管理
  • サプライヤ評価の際の保証やリベートまで追跡できる課題
  • 全ての情報を単一リポジトリで管理

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 おわりに

供給リスクを回避する方法サプライヤ管理における4つのポイント(調達戦略、現場視察、製品検査、スコアカード)を組み合わせて実践していくことで、製品安全性を脅かすリスクを緩和し、企業のあらゆる問題への対策を準備しておくことができます。また、本文で考察したプロセスは、対サプライヤだけでなく、サプライヤの下請企業にも適用することができます。

これら全てのステップは、ビジネス戦略上の重要な要素となりますが、まずは自社におけるそれぞれのステップにおける現状を評価することが先決だと言えます。

企業ブランドや消費者の信頼を守るために、連携した対策プログラムを立て、それに従って企業努力をしていくことがビジネスの成功の鍵となります。

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