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新興国からの医薬品有効成分(API)の調達
Chris Merchant、Lynn Rideout著
新薬は、FDAに申請を提出してから承認が出るまで2年間待ち、ようやく正式に商品として販売できるようになります。しかし、数年もすれば新薬の特許が切れ、独占販売権を使って最大限に利益を拡大できるような超大型新薬の開発中でもない限り、数十億ドル単位で売上が減ることになります。製薬企業はこうした状況にどう対処すればよいのでしょうか?答えは、将来の競争優位を確保するために必要なコスト削減計画を立てることです。
しかし、どうやってコスト削減計画を立てればよいのでしょうか?多くの製薬企業では、これまで触れられることのなかったAPI(医薬品有効成分)の分野にメスを入れ、より低価格で提供できる新しい調達先を検討し始めています。インドや中国などの低コスト国では、何百社もの会社が急成長を遂げており、そこから何千種類ものAPIを調達することが可能であり、しかも大幅なコスト削減が期待できます。他業種では、すでに10年以上も前から低コスト地域の調達先を活用して、大きな成果を挙げています。それならば、製薬企業がオフショアで調達するのも、それほど難しくないと考えられるのではないでしょうか。
しかし、実際にはそう簡単なことではありません。世界中から発掘したAPI調達先を自社のサプライチェーンに統合し、莫大な利益を得ている製薬企業がいるのは事実ですが、それには相当のリスクが伴います。もし方法を誤れば、最悪の事態を招くことになります。食品業界や製造業で問題となった汚染された製品の出所が、低コスト国から調達であったことが判明した事件では、大規模な製品リコールと深刻な健康問題へと発展しました。
例えば、昨年、玩具の塗料に鉛が含まれていて問題になった製品のリコールには、何億円という費用がかかりました。また、メラミンで汚染された小麦グルテンがペットフードを製造するメーカー数社に流通した事件では、多くの動物の命が奪われました。いずれのケースも中国の不良サプライヤが汚染の発生源であることが突き止められましたが、中国の環境規制や品質標準は米国に比べると非常に緩い上に、その基準ですら曖昧にされてきたのです。
製薬企業は、APIの調達を検討する際に、こうした問題をきちんと認識しておくことが重要です。医薬品の場合、どんな汚染食品や汚染玩具のリコールとも比較にならない程の莫大な損害額が発生するからです。汚染玩具やメラミン混入の事件は、メディアや紙面を騒がせ、様々な政府機関から新しい基準が提案されましたが、もしAPIで同様の重大な事件が起こったとしたら、それ以上の大きな事件になるでしょう。消費者が医薬品を信頼できなくなれば、政府や一般市民の間にかつて経験したことのないようなパニックが起きるかもしれません。
製薬企業の前に立ちはだかる大きなリスクは、製品リコールに対する厳しい報道や財務上の痛手だけではありません。製薬企業には、特許申請した医薬品の独占権が認められる17年という枠があり、特許収入を得られる期間はタイトになってきています。製品が世に出る前のテスト段階で有害な化学物質が見つかったとしたら、テストフェーズに2~3年の遅れが出て、事実上の独占販売市場で売上を伸ばす期間は短くなります。
製薬企業は、こうした落とし穴に注意し、以下の要件を検討することで、低コスト国からのAPI調達による経済的メリットを十分に活かすことができるでしょう。
政府任せにしないこと
FDAはある意味、アメリカ政府の期待を明確な形で表してくれるといった点で役に立っています。FDA当局は、政府が他業種の品質管理プロセスを監督するよりも、はるかに複雑な品質管理プロセスを医療業界に求めています。しかし、製薬企業はこうした政府基準よりもワンランク上の基準で、自社のAPIの調達先を取り締まる必要がありますその理由として、当局の指導がいかに厳しくても、FDAの承認が政治的要素に左右されることが多いからです。もし基準に満たない粗悪な品質管理が、FDAの承認サイクルの「盲点」に入って見逃されてしまったら、FDAに初回申請を却下されることよりもはるかに最悪な結果をもたらすことになるでしょう。製薬企業は、常にFDA基準よりも高いレベルでAPI調達先を管理しなければなりません。
長期的なコミットメントには短期的な投資が必要
低コスト国からの調達を始めるにあたり、APIの調達先が業務を円滑に遂行し、前に述べたような高い基準で運用できるようになるまでに数年かかるということを理解しなければなりません。新規サプライヤとの提携に向けて現地で強い地盤を作り、オペレーションを繰り返して品質管理の手順を確立していくためには、大規模な先行投資が必要となります。製薬企業は、サプライヤと一緒に何度か手順を実行しながら訓練し、最初から最後のプロセスまで定期的に監視することで、手抜きや間違いが生じないように徹底しなければなりません。
オフショアのサプライヤを自社のサプライチェーンにシームレスに統合し、成功を収めている製造企業は、一夜にして成し遂げたわけではなく、数年という時間をかけて実現しています。製薬企業は製造企業が10~15年前にいた場所に立っています。製造企業は、サプライチェーンをグローバルに展開し、軌道に乗せるまでに10年以上もの歳月を費やしてきました。それと同様に製薬企業にとっても、API調達先が独立できるまでには、最低でも同じくらいの期間を要することになるでしょう。
オフショア取引先の数を限定する
毎年、低コスト国では、様々な特殊化学品を取り扱う新しいAPI調達先が誕生しています。サプライチェーンの多様性を拡大し、さらにコスト削減機会を増やそうとして、何十社もの低コストAPIプロバイダと取引することになりかねません。しかし、低コスト地域でAPI調達先を開拓するのに要する莫大な時間と投資を考慮するならば、バイヤー企業は量ではなく質にフォーカスすべきでしょう。多くのサプライヤを相手に品質基準を高めようとするよりも、1社か2社と長い時間をかけて優れた品質基準を確立することが重要です。
高い品質基準は、デューディリジェンス(適正評価)で始まり、継続的なサプライヤ業績管理で持続する
高い品質基準を築き、それを徹底するための最善の方法は、厳密かつ徹底したプロセスを通して取引先として適正なサプライヤを発掘し、品質と安全性を保証する上で重要なポイントに焦点を当てた定期的な分析、確認、監視を実施することです。これを実現するための方法は、選定プロセスの最初のRFPの評価基準として、安全性を設定することです。新しいビジネスチャンスをめぐって競い合っている時こそ、サプライヤはバイヤー企業のニーズに最も気を配っているはずです。製薬企業がこのような基本姿勢を示すことで、取引先候補のサプライヤに彼らの品質基準と安全性の高さを証明させることができます。また、安全性に関して最初から認識させることができるだけでなく、彼らのパフォーマンスを継続的に評価する際の基準にもなります。
もうひとつの重要な要素は、現地で地盤を築くことによって、バイヤー企業が定めた基準に対するサプライヤの継続的な説明責任を徹底することです。バッチテストをランダムに実施し、日々のオペレーション監視を強化して、サプライヤの監査を頻繁に実施することが大切です。これを定期的な現地査察に頼っているようなら、すでに失敗していると言えます。製品に影響を及ぼす可能性のある問題は、薬局の棚に並ぶ前に検知されるべきです。
業界評論家の間では、医薬品メーカーが長期的な成功を収めるためには、オフショア調達が成功するかどうかにかかっているという意見で一致しています。つまり、オフショアのAPI調達先を活用するかどうかが問題なのではなく、彼らをどのように管理すれば、品質を犠牲にせずにコストを削減できるかが問題になるのです。新しい市場や供給先の評価と管理を可能にするソリューションやプロセスに投資することで、低コスト地域からの調達で得ることのできるメリットを最大限に享受できるようになるでしょう。
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